2014.05.27

リノベーション

目白ホワイトマンションmemento

入居者の暮らしに合わせたたった1室のリノベーションが、 マンション全室を満室にした画期的な賃貸システム

・リノベーション ・賃貸事業プロデュース

 

「目白ホワイトマンション memento」は、東京都目白駅から徒歩5分という立地にありながら、築40年の古さによって、約半数が空室になっていたマンションです。らいおん建築事務所が、その中のたった1室を ”画期的な方法で” リノベーションしたことによって、4ヶ月後にはマンション全室が満室となった、という面白い事例です。

 

最初にオーナー様からご依頼いただいたのは、ある1室のリノベーションについてでした。そのお部屋は、味わいのあるヴィンテージマンションの良さが活かされていないリフォームがされていました。もしこの状態から建築家がデザインをしたとしても、入居者が見つかる保証はない。それであれば、まったく手を加えていないお部屋を、住む人の好みに合わせてつくり上げる方が、無駄なお金もかからず、かつ入居者の満足度も高くなり、入居希望が殺到するのではないかと考え、オーナー様からもオバケが出ると言われた別のお部屋を、最終的にリノベーションを手掛けることにしました。
オーナー様の柔軟なご理解をいただき、まずは入居者探しから始めました。先に入居者を探すことは、空室のリスク回避にも繋がります。そして入居者が見つかると、その入居者のやりたいことやイメージから、デザインを考え、プロとして一つ一つ施工可否の検証や予算調整などを行います。そして施工も、ワークショップ形式にし、入居者を中心にその友人と楽しんで行います。

またリノベーション費用捻出の仕組みも、とても画期的なものです。

リノベーションの全体費用は300万円でした。それを、オーナー100万円、入居者50万円、そしてらいおん建築事務所も50万円投資し、残りの100万円はDIYで賄うという内訳です。らいおん建築事務所は、この時点では設計料を貰わず、初期投資まで行っています。

一般的な設計事務所として考えると、300万円に対する設計料はこの場合60万円ほどで、なおかつ工事完了後は一切責任を持ちません。ですが、いくら設計をしても、入居者が見つからなければ、オーナーにとっては設計料の負担だけではなく、空室が続くリスクを背負うことになります。

そこで、当社には入居後に報酬を得られるようなシステムにし、初期投資を行うことで、当社としても責任感が生まれ、オーナーさんにも負担にならず、入居者も施工予算が上がるため、3者にとって良いシステムを考えました。

具体的には、まずらいおん建築が、この部屋を4年間家賃3万円で借り、それを入居者に、2年間5万円・3年目以降7万円で転貸するというシステムです。

すると、オーナーは3年間で投資回収。らいおん建築は、2年間で投資回収し、そのあと約100万円の設計料を得ます。入居者は、相場家賃7万円のところを2万円安く借りれるため、2年間で投資回収でき、なおかつ2年間の家賃の一部を先払いすることで、好きなようにデザインした部屋を手に入れることができたのです。

このプロジェクトが実現したのは、オーナーさんの考え方が柔軟だったことが大きなポイントでした。好きに改修していい賃貸住宅はほとんどありません。

施工は、入居者やその友人たち、DIYに興味のある方々が集まり、解体や床貼りなどのワークショップを行ったことで、家づくり、リノベーションの楽しさ体感してくれたようです。すると「自分もやってみたい!」「賃貸でもDIYできるんだ!」と、続々と他の空室に入居が決まっていったのです。らいおん建築事務所がリノベーションを担当した1室以外は、オーナー様の負担は0円で、全室を満室にできたことになります。

また、入居者も、似た者同士なのか、いつの間にか仲が良くなり、屋上で食べ物を持ち寄って映画上映やフラメンコ上演、地域のお祭りへの積極的な参加するなど、自分らしい暮らしをし、地域との関わりも大切にしています。
このように、柔軟な考えをもつ若い人達が暮らせるような仕組みを一緒にリデザインするお手伝いを今後もしていきたいと思います。

目白ホワイトマンション memento



竣工年:2014
場所:東京都豊島区
用途:住居
主要構造:鉄筋コンクリート造
規模:29.3㎡(202)85.21㎡(101)
撮影: