2020.06.05

リノベーション

マルカン耐震改修

「市民に愛される大食堂のある旧マルカン百貨店」段階的利用のための耐震改修設計・工事監理

耐震改修設計 工事監理

「マルカン百貨店」は、岩手県花巻市の、市民に愛される大食堂のある百貨店でしたが、耐震基準を満たしていないことと建物の老朽化のため、2016年6月に閉店することになっていました。そこで、地元の若手経営者である小友康広さんが「上町家守舎」を設立し、耐震改修を行った上で「可能な限りそのままの形で6階の大食堂を存続させること」をミッションに、運営を引き継ぐことなりました。そして「マルカンビル」は、翌年2017年2月に花巻市のエリアを象徴する商業施設として復活いたしました。

らいおん建築事務所は、できるだけ店舗を営業しながら行う耐震補強工事の設計・施工監理、それに付随する法適合・改修コスト調整などを担当しました。

すぐに営業再開をする必要があった大食堂フロアは昭和レトロな内装をそのままの形で利用できるよう、必要になりそうな耐震スリットの施工を先行して行いました。他のフロアは一端閉鎖して所管行政庁による指示の対象となる特定既存耐震不適格建築物の要件にならないような利用面積にして、まずは大食堂フロアと1階を開業、その後他のフロアの耐震補強を行うことになりました。それにより閉店から9カ月という短期間で1階カフェスタンドと物販スペース、6階の大食堂を先行してオープンすることができました。

耐力壁の増設や開口閉塞などを行う耐震改修計画の中で、排煙上有効な開口部の一部が耐震補強の壁により閉塞されてしまうため、各フロアの防煙区画の計画の見直しを行うとともに、1階は階避難安全検証法にて排煙設備の免除としました。それにより大規模な設備や建築の改修を無くし、コスト削減、工期短縮をすると同時に、適法化と安全性の確保を行いました。上層の7、8階は鉄骨造の建物に2つのRC塔屋で構成されていたため、それらをRCスラブで接続し、地震時に一体として挙動するようにRC・S接続部の補強を行ないました。そのものの落下危険性と建築全体の荷重を考慮して、屋上のクーリングタワーや貯水塔等の設備は解体撤去としました。

大食堂は工事監理中に食事する際も、どこからこんなに人が集まっているのかと思うくらいの賑わいで、様々な世代が同じ空間に集っていました。地下フロアにできたスケートボードショップ&パークや新たに2階に新設されるおもちゃ美術館など閉鎖フロアも段階的に利用されつつあります。この賑わいが途切れることなく、違うカラーを持つ人々も新たに巻き込みながら、マルカンビルはこれからも花巻のリノベーションまちづくりの拠点であり続けるでしょう。

協力事務所:[構造]木下洋介構造計画 [建築]ARIWRKS [防災]安宅防災設計(1階の階避難安全検証法)

 

マルカンビル大食堂HP

花巻家守舎・上町家守舎HP

 

マルカンビル大食堂 ©上町家守舎

マルカンビル大食堂 ©上町家守舎

マルカンビル大食堂 ©上町家守舎

マルカン百貨店閉店時メッセージ ©上町家守舎

マルカンビル地下1階・スケートボードショップ&パーク

閉鎖フロア(8階)の新設した鉄骨ブレース

耐震補強壁のある1階カフェスタンド

花巻のランドマークとしてのマルカンビル

竣工年:2020年(耐震改修工事完了年)
場所:岩手県花巻市
用途:大食堂、商業施設、カフェ、スケートボードショップ&パークなど
主要構造:鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
規模:地上8階 地下1階 7742.52㎡(閉鎖部分含む)
撮影:上町家守舎(一部)