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噂のロイヤルアネックス・メゾン青樹に初めて行ってきました

2013-02-10 12.05.20奥さんのサンドイッチ屋さん「あぶくり」のお客さんである青木さんのマンション、ロイヤルアネックス・メゾン青樹の新しい部屋と屋上のソラニワの内覧会(外覧会?)に行ってきた。といっても、今日の僕のお役目は、青木純さんがこのお披露目パーティーで提供するお食事の中にあぶくりのサンドイッチをということで沢山御注文いただいたので、出前としてお届けに上がったのだ。都電、向原まで。

もうすでにいろんなところで話題になっているので、いまさら感があったらごめんなさいね。

青木さんは、おじいさんの代に建設されたロイヤルアネックスというマンションを受け継がれた若い大家さんだ。空室の多かった2年前に、入居者が自ら壁紙を選べるマンションとして企画をして以来、入居希望者が殺到し、今、行列の出来るマンションとして新聞・テレビで引っ張りダコの超売れっ子大家さん(そんなカテゴリーがあるかどうか知らないが)だ。

「原状回復」という奇怪な風習が残る日本の賃貸住宅業界だが、僕の理解では、青木さんは原状回復の考え方を「退去後」から「入居前」にタイミング移動しただけ。 「退去後」と「入居前」。言葉としては違うけど、意味は同じ。

青木さんは、これまでに通常行なわれていた、賃貸マンションやアパートで住人が退去してしまった後の部屋に、新しい入居希望者が物件見学や入居申込に来る前に壁紙を張り替えるというタイミングを、新しい入居者が表れて入居を確定した後に張り替えるというタイミングに変更させただけ。

写真

そこにどんな新しさがあるのだろうか。

僕が考える青木さんの新しさは、壁紙を選ばせるという行為にではなく、「選んで決める」という一連の過程を入居者と大家である青木さんが一緒に楽しんでいるというところにつきる。だから、ただ単に壁紙を選べるマンションですってやったって、絶対に行列なんか出来るわけがないと思う。 何度もミーティングをして「自分に一番合う」だとか「自分が一番望んでいる」お気に入りのその「一枚」決めるプロセスの共有だ。こうすると、多分マンション住民の「住まう事に対する意識」は格段に高まると思う。これはなんとなく小倉魚町のメルカート三番街、フォルム三番街、ポポラート三番街をはじめとした中屋ビルのリノベーション事業の入居者との関わりから僕が実践的に得た感覚だ。参加型の不動産運営。賃貸住宅といえども自分の住まいに愛情と愛着をもって主体的に住みこなす新しい層の出現だ。(これまでも大切にしていた人はいただろうけど、それは大家や管理会社が押し付けるルールが厳しかったからだと思う。)おそらく大切に住みこなしてくれるだろう。

入居者が変わったら「クロスを張り替える」という日本の不動産業界に超固定化してしまった習慣に、「タイミングずらし」「プロセス共有」と、青木さんの持ち前の明るさと人柄と、「エンターテイメント性の付加」を忘れないというある種の彼の天才によって、この人は見事に日本一有名なマンションオーナーになったのだと思う。

さて、前置きが非常に長くなってしまったけれど、このロイヤルアネックスで青木さんは、もう壁紙を選んでもらうというだけには飽き足らず、オーダーメード賃貸なるものを始めてしまった。入居者が自分の好きなように間取りも材料も、デザイナーに相談しながら自由に創るというもの。夏水組の坂田夏水さんが手伝うその二つめの部屋の内覧会。 みなさん良いですか?もうマンション買わなくてもいいんですよ。賃貸マンションをすきなようにリノベーションできる。そのリスクは全部オーナーが負担してくれるんですよ。 でもね、僕は、このマンションの入居者には相当のハードルが課せられていると思う。

それは、誤解を恐れずに一言で言うと、「オシャレでなければならない」ということ。青木さんのこの主観的な評価軸に対して、住まい手となるべき人は、創りながら自身の内面をさらけ出していくことが、賃貸カスタマイズ住民には求められるのだ。

興味のある人は観に行ってみたら良い。執拗なまでに自分たちが暮らす空間に対して妥協を許さない住民たちの姿を。空間ではなく、そこに暮らす人達の生き生きとして自信に満ちた笑顔がなによりの証拠だ。

そして僕にとって面白いのは、彼らには手の抜きどころというのが存在しない点だ。出来上がったインテリアをみていたらわかると思うけれど、最初から最後までずーっとモチベーションが高い。我々設計者が手を抜いているような誤解を与えてしまうといけないので断っておくけれど、僕が言っているのは「デザインの出番」のことだ。作り手側の終止出しゃばったデザインは窮屈で押し付けがましい。だけど住まい手が、使い手が自らそれをやっているから、全然嫌みな感じがしない。これにはどんなインテリアデザイナーも、もうかなわないと思う。

自分たちの住まいを自分たちの好きなように創る。
社会が成熟して自由を手に入れていく過程で建築の専門教育を受けていない(ごめん多分青木さんはそうだと思う)人が、正面から住まい手と住まいに向き合って時代に会った人と建物の関係を見事に描き出している点に僕が青木さんに一番の爽やかさを感じるところだ。(顔は爽やかじゃないけど、それはお互い様か)

ロイヤルアネックス・メゾン青樹は、住まうということに対してどこまでも貪欲な人達の集まりだ。 感度が高く、これまでにないライフスタイルの集団が高密度に住む街が向原にある。青木さんはロイヤルアネックスをつくりながら、向原に暮らすというライフスタイルを提案しながら、まちづくりをやっているのだと思った。アフタヌーンソサエティの清水さんがおっしゃっていた、まさに「家持ちの家守」。 まちづくりにおいて一番影響力をもつという、不動産オーナー自ら家守になるケース。魚町の梯さんもそうだけど、大塚向原には青木さんがいる。

そんな青木さんに、リノベスクールに合わせて、北九州に来てもらう事になっています。
不動産オーナーのためのリノベーションスクール